KANさんの楽曲『23歳』に関する感想や情報を記しているエントリです。
収録先
- 17th Album『23歳』(20/11/25発売)
初オンエア
- 20/11/01(日)【FM】FM COCOLO『SUNDAY MARK’E 765』(13:53)
ファーストインプレッション
アルバムタイトル曲にふさわしい自叙伝系
発売前のラジオオンエア数ダントツの第1位となったこの楽曲は、カテゴリー的には「KAN自叙伝系」。
これまでも、KANさんの「自叙伝系」楽曲は「Songwriter(1998年)」「キリギリス(2006年)」「IDEA(2007年)」など複数ありますが、それらは音楽家キャリアを中心に歌ったものが多かった印象です。今回の「23歳」は、同じ自叙伝でも、生活感や恋愛経験も含めてもう少し角度やスコープが広くて、KANさんがその後、今も変わらず「KANくん」「KANちゃん」と呼ばれている由縁がよくわかります。
曲調はとにかく若々しくオシャレな跳ね系で、聴いた後で気分が軽やかになるのが体感できると思います。23歳当時のKANさん自身とその周辺の景色が追体験できる不思議な楽曲です。
年々成長する曲?
終盤の歌詞で、「気がつきゃ58歳」「僕は58歳」という部分があり、2021年9月24日に歳を取って「59歳」になって以降、この楽曲がライブで演奏されるときにこの歌詞が歳をとっていくのか、気になってしまいますね。
かつて、「ぼくの彼女はおりこうさん」の終盤の歌詞で「これでもぼくはもうすぐ30歳」という部分があり、とっくに30歳を過ぎてからのライブで演奏されるときにはメンバー紹介がてら、当時の実年齢を歌っていましたが、この楽曲もそのような「成長」をし続けるのでしょうか。うっすら注目しておきたいところです。
さわやかなStevie Wonder
先ほど「軽快な跳ね系」と書きましたが、その源流は明らかにStevie Wonder。メロディーラインのうねらせ方や歌いまわしやフェイクには、説明不要なほどにその要素が散りばめられています。
KANさんの楽曲で言うと、「ホタル」(1994年)も同系列ですが、それよりも思い切っていてセクスィー。歌詞の載せ方が非常に心地よいです。特に、Aメロの「今と変わらないアイビールック 上下全部VAN」と「風呂なしの6畳には ピアノとシンセサイザー」のところは聴いた瞬間うなりました。
全体を聴いたときに、このメロディラインや歌いまわしのクセにコード進行、どこかで浴びたことがあるぞ、と思ったら、aikoさんでしたね。そりゃそうだ、aikoだって源流はStevie Wonder。好きなアーティスト1番目にKANさん、5番目にStevie Wonderですから。
さらに巧妙性を増す転調トリック
この曲も知らないうちに実は転調しているところが何箇所かあるのですが、中でも、びっくりするくらいあっさりと転調したところがあります。1コーラス目サビラストの「そんな23歳」のところ。その前にサビ途中で「今じゃ」を踏み台にして一度「A」から「C」に転調しているのですが、ラストの「そんなにじゅー」の部分で後ろでは「レ・レ♯・ミ~」の3音を鳴らすだけで、次の瞬間に「A」に戻っているというトリック。
転調直前まで8分音符で「C」を叩き続けることで、転調する前の助走路を作っておいて、「そんなにじゅー」の部分の「レ・レ♯・ミ~」でジャンプして、「さんさ~い」で「A」に着地ている感じ。素敵です。
うねるストリングスにも注目
この楽曲のストリングスは、勢いよくを駆け上がったと思ったらすぐに滑り降りてくるフレーズが何度も出てくるのが大変印象的です。全編通して弦が鳴っているのではなく、要所要所に登場箇所を絞って駆け巡らせているのが、逆に存在感のある理由だと思います。
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