2024年10月30日発売、KANさんオフィシャルとしては4作目となるベストアルバム
「IDEAS III ~the very best of KAN~」
についての情報まとめエントリです。
概要
CD2枚組 / 三方背スリーブケース、ブックレット封入
EPCE-7875~6
¥3,960 (税抜価格¥3,600)
2007年に発売されたKAN監修によるベストアルバム「IDEAS」の続編的な作品。
DISC1では2007年版「IDEAS」の17曲をそのまま収録。
DISC2では2010年以降にリリースされたシングルを中心に楽曲をセレクト。
現在は実質的に入手不可能となっている、2005年に通信販売限定でリリースされた『何の変哲もない Love Songs』より「何の変哲もない Love Song」「雪風」の2曲を収録。
さらに本人名義以外にも、共作・企画・ユニット楽曲も多く発表してきたKANの参加楽曲から、山崎まさよしとの「記憶にございません」、秦基博との「カサナルキセキ」、Cabrells(KAN、ジョンB、菅原龍平、ヨースケ@HOME)の「Chu Chu Chu」を収録。
シンガーソングライターKとの共作曲「赤字のタンゴ」は音源としては初のリリース(2015年大阪でのイベントでのパフォーマンスを録音)。
・ブックレットには、meiyo氏がコメント寄稿
<各種特典>
・先着特典:メガジャケ(Amazon)
収録曲目
収録曲目
DISC 1
- IDEA
- Songwriter
- 言えずのI Love You
- サンクト・ペテルブルグ -ダジャレ男の悲しきひとり旅-
- Happy Time Happy Song
- MAN
- プロポーズ
- DISCO 80’s
- 星屑の帰り道
- 長ぐつ
- まゆみ
- 愛は勝つ
- 世界でいちばん好きな人
- 猿と犬のサルサ
- カレーライス
- KANのChristmas Song
- 50年後も
DISC 2
- よければ一緒に
- Listen to the Music
- 桜ナイトフィーバー
- ポップミュージック
- 23歳
- エキストラ
- 何の変哲もない Love song / 木村和
- 雪風 / 木村和
- Chu Chu Chu / Cabrells (KAN、ジョンB、菅原龍平、ヨースケ@HOME)
- 赤字のタンゴ / K-KAN
- 記憶にございません / YAMA-KAN
- カサナルキセキ / KAN+秦基博
※収録内容・パッケージ仕様等は、変更になる場合あり
「IDEAS III ~the very best of KAN~」とは?
9月6日、KAN公式サイトおよび各CDショップサイト・各アカウントにて、KANさんの新たなベストアルバム「IDEAS III ~the very best of KAN~」が10月30日に発売されることが発表されました。2枚組CDで、2007年にリリースされたベストアルバム「IDEAS」の続編的な位置づけということで、このアルバムは、これまでのKANさんの長い音楽家としてのキャリアを振り返り、KANさんの音楽の魅力を今一度広く伝えることを目的としていると想定されます。
DISC 1として「IDEAS」をそのまま収録した意味
DISC 1では、2007年版の「IDEAS」をそのまま収録しています。これはKANさん自身が楽曲を選んだベスト盤であり、発売当時も、新たにKANさんの音楽に触れるリスナーにとって非常に重要な意味を持っていました。KANさんが「自分の音楽とはこういうものだ」と定義した楽曲群を、初めてのリスナーにわかりやすく伝えるために、このアプローチが取られたのです。ここでは、これを一旦「IDEAS I」と呼ぶことにします。
これまでのKANさんの音楽を知らないリスナーには、まず「IDEAS I」でその世界観を知ってもらい、それ以降のシングル+αを収録した続編ベスト(仮に「IDEAS II」と呼ぶとします)で追いついてもらう。それらを「IDEAS III」(I+II=III)というパッケージでドッキングさせ、別々に購入するよりも少しリーズナブルな価格で手に入れられるようにする、という意図があるのではないか、と考えられます(ドラクエで言えば「Ⅰ・Ⅱ」とまとめて発売されるイメージですね)。
「IDEAS II」が単独で販売される予定は現時点ではないようですが、今後の展開として検討されている可能性もあるかもしれませんので、今後の情報には注目しておきましょう。
DISC 1(IDEAS I)の収録曲
「愛は勝つ」 – KANさんを象徴する楽曲
「愛は勝つ」が1曲目ではなく、12曲目に配置されている点は非常に興味深いです。この楽曲は言わずもがな、KANさんの永遠の代表的作品であり、そのシンプルなメッセージと力強いメロディが、以前より多くのリスナーに愛され続けています。しかし、KANさんにとってこの曲は、ただのヒット曲として特別扱いするものではなく、他の曲と同様に「作りたい曲を作った中の1曲」に過ぎないというスタンスが感じられます。
そのため、アルバムの1曲目や目立つ位置に配置して「ヒット曲」として強調するのではなく、12曲目という後半に持ってくることで、特別な存在ではないことを示しているように思います。
「IDEA」「Songwriter」「HTHS」 – KANさんの自叙伝的楽曲
「IDEA」は、彼のベストアルバム「IDEAS」の”ほぼタイトル曲”でもあり、KANさんの音楽に対する哲学や、アレンジ、アイデアそのものに向き合う姿勢が込められています。この曲は、音楽家としての彼のアイデンティティを深く掘り下げたものです。
「Songwriter」は、そのタイトル通り、作曲家としてのKANさんの人生を語る自叙伝的な楽曲です。歌詞の中で、自分自身や過去、恋愛、そして未来に向かう姿が描かれており、「自分が何者であるのか」を問い続けるKANさんの姿勢が色濃く表現されています。弾き語るには難易度の高いピアノアルペジオと共に「作曲家として何かを表現することこそが自分の存在意義」とも取れる歌詞が、この楽曲の核心をなしています。
「Happy Time Happy Song」では、少しユーモアを交えながらも、「小さな音楽家」としての自分を謙虚に捉えつつ、リスナーに向けてエネルギーを届けようとする姿が描かれています。ピアノ8つ打ちで始まる特徴的な軽快なメロディと前向きなメッセージで、KANさん自身が人生を楽観的に捉え、我々にも同じようなポジティブさを届けようしています。
これらの楽曲は、KANさんのキャリアを理解する上で欠かせない曲であり、彼の音楽的・精神的な成長が反映されています。
「サンクト・ペテルブルグ」「猿と犬のサルサ」 – KANさん独自のユーモアと視点
KANさんのユーモアが光る楽曲がこの2曲です。
「サンクト・ペテルブルグ」は、成田からサンクト・ペテルブルグまでの旅の様子がコミカルに描かれており、一見、ただユーモアを追求しているように見えます。しかし、歌詞をよく読むと、主人公である「ダジャレ男」は軽快なやり取りを楽しみつつも、どこか切なさを感じさせます。表面的な笑いの中に、孤独や思い出への懐かしさが織り交ぜられているのです。
「猿と犬のサルサ」も、明るいラテン系のリズムに乗って、ただ踊ろうというだけではありません。KANさんはこの楽曲で、音楽を通じて国境や違いを超えて人々が一つになることを描いています。そこまで壮大なテーマかはさておき、KANさん自身が世界平和のメッセージを込めた楽曲を持っている背景があり、その影響でこの曲にも深みが加わっています。そもそも犬猿の仲、というサルサの国にはきっと由来がないであろう古(いにしえ)の言葉に、「サルサ」と「猿さ」を掛けて楽しくミスマッチさせる、というKANさんならではの絶妙なセンスが、普段KANさんが作らなさそうなジャンルの楽曲なのにベスト盤収録することになった理由なのだろうと勝手に思っています。
KANさんの音楽には、ただ楽しさを提供するだけでなく、リスナーに何かを考えさせる側面があります。これが彼の独自のアプローチであり、私たちに多くのことを教えてくれる理由でもあるのです。
「プロポーズ」や「50年後も」 – KANさんならではの繊細な感情表現
これらのバラードは、KANさんの繊細な感情表現が際立つ楽曲です。KANさんが描く間接的な愛情表現はリスナーをいつでも精神的に若返らせてくれますし、特に「50年後も」は、KANさんの奥様への真剣な愛の誓いであることは既に広く知られています。
日常の小さな幸せや、ちょっとした気遣いを大切にしながら、瞬間を巧みな言葉で表現しています。これは、KANさんの持つさりげなくも真っすぐな温かさや優しさを、不器用さも交えながら滲み出たものだと思います。「プロポーズ」は、今後もファンの間で繰り広げられる”おいで祭り”に備えて、ぜひとも今後KANさんにリーチする皆さんにも押さえていただきたい1曲です。
全曲分書きたいけど書ききれない(笑)
そのほかにも、KANさんの視点で捉えられた日常の些細な瞬間を描いた「カレーライス」や「まゆみ」、切ない恋の形を表現した「言えずのI Love You」や「星屑の帰り道」、などなど、KANファンだからこその視点で深く掘り下げて書きたいことが山々なのですが、時間と文字数がいくらあっても書き足らないので、ここから先は実際に「IDEAS Ⅰ」を改めて聴きつくして、どこかで思いついたように書いていきたいところです。
DISC 2(IDEAS II?)の収録曲
DISC 2では、2007年の「IDEAS」発表後、2010年以降のシングルを中心に、また一歩KANさんが音楽的な進化を感じさせてもらえた楽曲が集められています。加えて、フランスに渡仏(「キリギリス」風に・笑)する前では考えられなかったような、他アーティストとのコラボレーション楽曲も多数収録されており、KANさんの音楽的な交友関係が拡がっていく様子が感じられるようになっています。
もし、KANさんがご自身で「IDEAS II」を作るとしたら、もっといろんな後続の時期のアルバムからもいろんな楽曲を収録しそうだな、という想像がなくはないですが、今回は、シングルやアルバムに収録したことがない作品群、という、ある意味「Songs Out of Bounds II」の位置づけに近いのかもしれません。
「何の変哲もない Love Song」「雪風」 – 現在は入手困難な楽曲の再収録
これらの楽曲は、2005年にKANさんのオフィシャルサイト開設記念で限定リリースされた「木村和」名義のピアノ弾き語りアルバム『何の変哲もないLove Songs』からの収録です。長らく入手困難だったことから、当時あまりインターネットに触れていないなどの理由で入手できなかったファンや、最近KANさんの楽曲に触れてファンになったという方にとっては、大変貴重な収録となります。
今となっては、ライブでは何度も演奏されているのですが、その原曲を聴く機会が得られなかった方々にとっては、待望の1枚となるでしょう。
「Chu Chu Chu」 – CabrellsというKANさんに与えた重要な引力
KANさんが2011年に結成したCabrellsは、ジョンBさん、菅原龍平さん、そしてヨースケ@HOMEさんとのユニットで、KANさんに新しい風・音楽的視点をもたらしました。メンバーそれぞれの振り幅のある個性が融合し、KANさんの音楽の幅はその後広がる結果となりました。
最新アルバム「23歳」に収録された「コタツ」もそのひとつで、これまで滅多に共作曲をオリジナルアルバムに収録しないKANさんが、ヨースケさんとの楽曲を収録するくらいの影響力でした。ソロとは異なる音楽作りによって、新たなアプローチを試みる貴重な経験となったことは間違いないでしょう。
「赤字のタンゴ」 – 衝撃の楽曲がついに初収録
シンガーソングライター・Kさんとの共作「赤字のタンゴ」は、2015年に音楽ライター・森田恭子さんがKさんに課した音楽イベント<連載・おとといミーティング:”K”olors>で、「赤」をテーマにした<RED>の回にKANさんがゲスト出演した際に「K-KAN(警官コスプレユニット笑)」として演奏された、ある意味極めてメッセージ性の高いピアノ連弾弾き語り楽曲。この後にも、同年の「風のハミング」でも演奏され、この時に録音された音源が収録されるようです。楽曲としての完成度(歌詞も曲もアレンジも)が大変高い1曲で、これが音源化されてアルバムとして収録されることの意味は大きいと思います。
「記憶にございません」や「カサナルキセキ」 – 様々なアーティストとの異色コラボ
山崎まさよしさんとの「記憶にございません」や、秦基博さんとの「カサナルキセキ」は、KANさんの幅広い音楽的交友関係を反映しています。なかでもこの2曲は、どちらかがどちらかの主従関係(メインとゲストという関係性)ではなく、完全に対等なコラボレーション。KANさんは元々他のアーティストとのコラボを行う際に、相手を立てて自分は控えめに・・・という傾向がある印象ですが、この2曲は、完全対等なイメージが強いです。特に「カサナルキセキ」は、ご存じの通り、秦さんとKANさんがそれぞれ別々に制作した楽曲を、同時に演奏すると1曲にカサナルキセキでした。まさに完全対等。そして、この楽曲にもヨースケ@HOMEさんの存在の大きさがうかがえます。
この「DISC 2」に収録されても違和感のないコラボ楽曲は他にも複数あります。これも森田恭子さん由来のイベント「ラッキーラクーンナイト」で結成された桜井和寿さんとのユニット「パイロットとスチュワーデス」で演奏された2人アカペラ楽曲「弾かな語り」。KANさん作詞作曲でFM COCOLO「風のハミング」でずっと演奏し続けられている楽曲「靱のハミング」。KANさんが他のアーティストに与え、かつ、逆に与えられた影響は大変数多く、それぞれ我々を今後も驚かせ続けるものだと思います。
「23歳」「エキストラ」 – 近年のアルバムからの話題曲
「23歳」は、2020年にリリースされたKANさんのバリバリ最新アルバム『23歳』のタイトル曲であり、KANさん自身の若かりし頃の記憶や感情がリアルに描かれています。大学5年生の頃の経験を基にした歌詞には、若い頃の迷いや挑戦、音楽への情熱が綴られており、23歳という割り切れない素数年齢が持つ特別な時間が描かれています。KANさんの自叙伝の中でも、若い時期にフォーカスを当てたお洒落な作品です。
「エキストラ」は同じアルバム『23歳』の収録曲で、人生の中で自分があたかも脇役のように感じる切なさを歌ったものです。女性に歌ってほしい楽曲、とKANさん自身が示していたこの楽曲は、これまでのKANさんにはなかったパターンであり、2019年のBAND LIVE TOUR『クイズ・新曲は誰だ!?』で未発表の新曲としてアンコールの最後にピアノ弾き語りで初演奏された日の衝撃は、今も忘れられません。
両曲とも、もちろん、近年のKANさんのキャリアの中で新しいフェーズに入ったと感じられる楽曲でしたが、そういう側面を持つ楽曲で、他に収録されても違和感のない楽曲は複数あります。前回の「IDEAS」にきっと候補に挙がりながら収録こそされなかったものの、「キリギリス」はKANさんの自叙伝的な意味合いが強く、「23歳」と並べて聴いてみると趣深いと思いますし、アレンジメントに対する意識のターニングポイントとも言える楽曲です。あと、本人が力を入れていた「中田ヤスタカ」系楽曲が1曲も収録されていないのです。DISC 2の曲数には余裕があったので、3曲中どれかが入っていてもよかったかもな、とか思ったりしています。
「IDEAS III」はKANさんのサウンドスケープクロニクル
「IDEAS III ~the very best of KAN~」は、現時点のKANさんの音楽を網羅するベストアルバムであり、KANさんのキャリアの中で築かれた多様な音楽表現を楽しめる内容となっています。DISC 1は、新たなファンにもKANさんの本質を伝える重要な役割を果たしていますし、DISC 2では他アーティストとのコラボレーションや入手困難な楽曲を収録することで、KANさんの音楽的な進化と、これまでの活動系譜(サウンドスケープクロニクル)に追いつくことができます。まさに、ベストアルバムの役割そのもの、という印象を感じています。
まだCD2枚組、ということくらいしか詳細が不明ですが、今後の発表には十分注意しておきたいところです。
meiyo氏ブックレット寄稿決定
9月23日、磯貝サイモンさんがゲストにmeiyoさんを招いて配信された「ときどきCP-80と話をしよう 第10話 -弾き損じばっちり編-」にて、『IDEAS III』のブックレットにmeiyoさんが寄稿されることが発表されました。まさにこれまでの「ときP」を、関係者の方がご覧になったことがきっかけになって実現したお話なのだそうです。
個人的には、まさかこのブログにこういう形でmeiyoさんの名前がきっちり刻まれる日が来るとは、と、感慨深いです。どのような内容になるか、楽しみにしています。
「II」ではなく「III」な理由
明確に「II」がなく「III」として発表される理由はどこにも明かされていませんでしたが、なんと、森田恭子さんが9月24日の「おとといラジオ」にて明らかにしてくださるそうです。(9/24放送後更新予定)
履歴
・公式サイト発売告知(24/09/06)
・特典情報追記(24/09/22)
・meiyo氏ブックレット寄稿発表(24/09/23)
・「II」ではなく「III」な理由(24/09/24)
商品情報
関連記事
2007年の「IDEAS」が発売された際に、BARKS記事が公開されていますので参考まで。
コメント